「誰もやりたくないアプリ」を3日でつくったら、広告収益3,500万円超え。800万ダウンロードの無駄タップアプリ「100万のタマゴ」が世界各国でヒットするまで。

2014年12月17日 |
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世界800万ダウンロード「100万のタマゴ」のバイバイさんにお話を伺いました。昨年あたりの話が中心ですが、世界でヒットしたアプリ例として参考になると思います。※ネタバレあるのでご注意ください。

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※株式会社バイバイ 代表の大杉友哉さん(左)、大谷聡子さん(右)。

謎のアプリ「100万のタマゴ」ができるまで。

「バイバイ」について教えてください。

大杉:
3名でアプリをつくっている会社です。2013年の12月に法人化したのですが、僕が大学4年の時(2012年2月頃)に活動をスタートしました。

当時システムエンジニアでの内定も決まっていたのですが、就職よりも会社を起こしたい気持ちが強くて、内定を蹴ってアプリ開発をはじめました。

「100万のタマゴ」がどのように生まれたか教えてください。

大杉:
実は「100万のタマゴ」は初めてだしたアプリだったんです。当初ゲームをつくろうとしていたのですが、全然おもしろくなくてリリースできなかった。

それで、アプリストアの審査も、広告を貼るのも初めてだったから「とりあえずアプリがだしたい、3日でできるアプリをつくろう」と開発したのが「100万のタマゴ」でした。

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※「100万のタマゴLite」が正式なアプリ名。

なるほど。どちらかというと「遊びのアプリだから、リリースさえできればいい」という感覚だったんですか?

大杉:
そうですね。今でさえ800万ダウンロードまでいっていますが、当初は「100ダウンロードいけばいいな」「だれか1人がクリアしてくれたら面白いな」という感覚でしたね。

「100万のタマゴ」の企画は、どのように出来たのでしょうか?

大杉:
「3日でおもしろいアプリをつくる」って無理だと思ったので、逆に「誰もやりたくないアプリ」をつくろうと考えました

それで「延々と画面をタップする」という苦痛な作業と、タップから連想して数字を数える「カウンター」を組み合わせたんです。

あと、数字が増えていく形は終わりがないので、ゼロに向かっていく形式にしたんです。「ゼロになると何かが起こる」と直感的にわかるように。

タマゴにしたのは「何かがでてくるはずだ」と気になるから、例えば石や水晶玉だと「中から何か出てくる」とイメージがしにくいですよね。

「100万回」という数字にしたのは?

大杉:
100万回という数字は、1000万回だとクリア不可能だし、10万回だと甘いと感じた。「普通は無理だけど、不可能ではない」というバランスが100万回だったんです。

100万回タップするのって、時間に計測するとたぶん100時間近くかかるんですよ。速い人でも70〜80時間でしょうか。

スペインから火がつき、海外でアプリが広まった。

リリース直後の手応えはどうでしたか?

大杉:
最初は、2012年の8月末にAndroid版を日本だけでリリースしたのですが、9月末時点で3万ダウンロードされていて「調子いいじゃん!」と思っていました。笑

そして、10月末にAndroidの海外版(説明文を英語にした程度)をだしたら、少しして一気に火がついた。12月にスペインで最初に流行って、そこからどんどん飛び火していきました。

なぜ、最初にスペインで流行ったのでしょうか?

大谷:
Twitterでスペイン語でリプライがたくさんとんできたので、「どうやって、このアプリ知ったの」ってスペイン人に聞いてみたんですよ。

そしたら、実はスペインでは「たまごっち」が流行っていたらしく、「たまご(TAMAGO)」という言葉が認識されていたんですね。海外版「100万のタマゴ」は「TAMAGO」というアプリ名にしてたんです。

なので、アプリストアで「たまごっち」「たまご」などで、検索されていたのかなと推測しています。アプリ名を「Egg」にしていたらダメだったかもしれない。

https://twitter.com/ERvanPutten/status/296971883730055168
※オランダの高校の先生のツイート。直訳すると「私のクラスの子たちはおかしくなってしまいましたw この世で作られたもっとも意味がないゲーム」、意訳すると「こんなのに夢中になってるwww」って生徒をカメラにおさめた感じ。

iOSはいつだしたんでしょうか?

大杉:
iPhone版は後追いで2013年の1月にだしました。実は何回もリジェクトをくらってAppleStoreの審査に落ちまくっていたんです。

単純すぎて無意味なアプリだったので、Appleから「もっとちゃんとしたアプリつくれ」って言われていました。笑

最終的には、「タマゴを叩く音」をつけて「音を選べる機能」もつけたら審査が通りました。

海外で火がつくと、パクリアプリもでてきましたか?

大杉:
はい、「Tamago HD」「Tamago2」などAndroidではパクリアプリがたくさんでていました。iOSは意外に少なかったですが、たぶんリジェクトされていたんでしょうね。

ドイツでは偽物の「Tamago HD」にランキングで負けたりもしたんですよ。でもある意味、「パクリが大量にでたおかげで、違う国にも広まった」という効果もあったかも。

tamago_pakuri

海外でダウンロードが多い国ってどの辺りですか?

大杉:
韓国が1位で累計100万ダウンロード以上。ピーク時は1日で14万ダウンロードくらいありました。その次がドイツ(100万DL以上)、スペインあたりです。

大谷:
あとフィンランドで、どーんときた時があって、それは若者に人気がある上院議員の人が「私はミラクルなアプリを遊んでいる」ってツイートしてくれて、そこから一気に広まりました。

フィンランドでは「南フィンランドポスト」という新聞のWEBサイトでも記事を載せてもらえました。笑

スペインから先はどのような国に広まっていったのでしょう?

大谷:
同じヨーロッパといっても隣同士の国に飛び火するわけじゃなかったですね。

最初はスペインで西ヨーロッパ。その次にドイツで中欧ヨーロッパ。北欧はノルウェーで人気がでた。次に中間のイタリアやフランスにいくかなと思ったらダメだった。

たぶんイタリア人やフランス人は「タマゴ叩くより、いろいろやることあるでしょ」みたいな感じで、国民性が冷めているのかも。笑

tamago_usergraph

日本ではどのようにダウンロードが増えたんでしょうか?

大谷:
日本は約10万ダウンロードで止まっていたのですが、「全世界500万ダウンロードを突破」というプレスリリースをうったら、ネットメディアで話題になりました。

日本は中高校生の口コミが大きかったと思います、大人は基本やらないですからね。

子供心に刺さるものがあるんですかね?

大谷:
「何か最後にあるんじゃないか」と好奇心をくすぐるんですかね・・・。

特に、7-8歳の男の子に「100万のタマゴ」をやらせると「うへへへへ」ってテンションで、平気で20分叩き続けるんです。子どもにとっては面白いみたい。

ネタバレになりますが、結末はどうなるんでしたっけ?

大谷:
このアプリ、努力は報われないんですよ。100万回タップが終わると「ワレルトオモウナヨ」ってでてくるだけ。海外だと「So What?(だから?)」ですね。

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※結末はユーザーの努力を見事に裏切る。画像はねとらぼより。

その無意味な結末について、ユーザーに怒られたことはありますか?

大谷:
たくさんあります。韓国のレビューでは「このようなアプリをつくって、あなた方は生きている価値があるのか」とまで言われました。笑

このアプリの評価は★5と★1できっぱり半々で分かれるんですよ。極端ですが「このアプリはクソだ」と「この面白さがわからないのか?」のどっちかですね。

「100万のタマゴ」のせいで、どのぐらいの時間が無駄にされたんですかね。

大杉:
800万ダウンロードで、仮に1ユーザーあたりの平均プレイ時間が1時間とすると、800万時間が消費された感じですかね。

1年が8760時間なので・・・おおよそ人類の時間が1,000年ぐらいムダになった感じでしょうか。なんというか、それだけ人間が合理的じゃないってことですよね。

ただ、半分のユーザーは最初の100回くらいでやめていますね。逆に、10万回ぐらいまでやっちゃった人は、無駄になるから最後までやり続けるような感じです。

ダウンロード数や気になる収益について。

いまのダウンロード数はどのぐらいでしょうか?

大杉:
「100万のタマゴ」は累計800万ダウンロードくらいです。海外比率が9割で、日本は1割弱です。

OSについてはiOSが300万、Androidが500万という比率。やはりドイツ・スペイン・韓国など、海外ではAndroidが主流ですからね。

収益面については、どうでしょうか?

大杉:
累計収益でいうと3,500〜4,000万円という感じです。月の収益でいうと2013年の2月が最高でした。

やっぱり国でいうと日本の収益性が高くて、日本だと1ダウンロードあたりの収益性は10円ぐらい。海外だと1ダウンロード平均4円くらい。

日本では60万ダウンロード程度(全体の約7.5%)しかされていないのですが、国別の累計収益額をだしてみると日本が一番でした。

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広告は何をつかっていたんでしょうか?

大杉:
リリース当時はフッターに「AdMob」のバナー広告を入れていたくらいです。正直よくわからず使っていたのですが、海外ユーザーがほとんどだったので、結果的に良かったと思います。

いまはインタースティシャルとウォール広告も追加していますが、収益性はそこまで変わらないですね。やっぱり海外ユーザーが圧倒的に多いからですね。

さすがに、今は収益がかなり下がっていますか?

大杉:
ゼロにはなっていないですが落ち着いてきてはいますね、(現在の収益は)月数十万円レベルという感じです。

バイバイでは今年8月ぐらいから放置ゲームなどもだしているので、「100万のタマゴ」は全体の月間収益の10-20%ぐらいの割合になっています。

「ホームレスを育てる放置ゲーム」ブーストも駆使して収益400万円。

バイバイさんで2番目にうまくいっているアプリはどれですか?

大杉:
最近だした「笑う聖者の行進」というホームレスを育てる放置ゲームが、約14万ダウンロードという状況です。

1ダウンロードあたりの収益性も平均30円(放置ゲームは良い時で50円近くになることも)でています。累計の広告収益でいうと約400万円、やはり放置ゲームは稼ぎやすいですね。

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「笑う聖者の行進」のランキングが急上昇しているタイミングは、なにが起きたのでしょうか。

大杉:
iOS版でブーストを1回打ったんですよ。GAMEFEATのブースト(1ダウンロード20円)をつかって2万5000ダウンロード分のブーストを実施して、Appstore総合23位までいけました。

ランキングからの自然流入も結構あって、ブースト広告の費用は3日ぐらいで回収できましたね。

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放置ゲームの広告配置って、ある程度テンプレになっているじゃないですか。という中で大事なのは、やはりヒットするかはネタ次第でしょうか?

大杉:
何をネタにするのかは大きいですね。「ホームレスを育てるアプリ」みたいに、人に伝えたくなるポイントがないときつい。

「笑う聖者の行進」の場合は、画像付きでツイートもできるようにしてるんですけど、そこから6,000人くらいアプリストアに誘導できていました。

「きのこガーリー」はすこし話題になっていた気がしますが、だめでしたか。

大杉:
きのこガーリー」は1万ダウンロードもいってないです。

プレイ時間も短いし、1ダウンロードの収益性も5円以下と低かった。ねとらぼさんが取り上げてくれて話題になったくらい。

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これからアプリ開発で生計たてたい人がいたとして、アドバイスをおくるとしたら?

大杉:
すごくチャンスのある世界ですね、今からじゃ遅いかというとそんなことない。

おすすめのジャンルでいうと、積み上げ型なら「定番ゲーム」、一発狙いなら「放置ゲーム」でしょうか。「放置ゲーム」はセンス次第ですが、大きい額は狙えますよね。

そして「定番ゲーム」は安定しやすいのがメリットです。バイバイでも「ふつうシリーズ」という「神経衰弱」「ブロック崩し」のようなゲームを出していますが、額は少ないですけど毎月安定して稼げていますね。

最後に告知などがあればお願いします。

大谷:
「きのこガーリー」のLINEスタンプを出しているので、良かったら使ってみてください。「きのこガーリー2」も開発中で、これから「粘菌丸きの子」ちゃんを推していきたいと思っています。

取材協力:株式会社バイバイ

100万のタマゴ(iOS/Android
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編集後記

ある意味、ヒットの着火点は「スペインでのたまごっち人気(TAMAGOという言葉の認知)」+「英語ローカライズ」ということか。

くだらない余談だが、100万回タップするには空条承太郎のスタープラチナでさえ、48.7時間(約2日間)不眠不休でオラオラしないと終わらないようだ。[パンチ速度=5.7発/1秒](パンチ速度とタップ速度は違うだろうけど)

なお、「北斗の拳」のケンシロウさんは約6時間で終わるらしい。[パンチ速度=45発/1秒](パンチ速度の仮説データ:空想科学読本14より)

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[画像引用:ジョジョの奇妙な冒険 モノクロ版3より]

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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